StarDust Tears

『ナポレオン』

TOHOシネマズ新宿

 TOHOシネマズ、売店があるロビーのフロアまでは入ったことあったけど映画観るのは初めてだわ、たぶん。ちょっとまだアウェー感あって、馴染みの新宿ピカデリーやバルト9で観られる映画はそっちで観てたんだけど、今回やってなかったので、長い付き合いになるしいつまでも忌避してるのはよくないと思い行ってきた。そんな大げさな話でもないのだが、どうも人の多い場所は苦手で。ってピカデリーも十分人は多いよな。やはり慣れの問題でしかないか。

 画面が暗いシーンが多くて観づらいのでIMAXレーザーが良いという意見を見かけてそうしたのだが、それほど暗い画面作りが目につく映画でもなかった気がする。通常上映と較べてみないとわからんけど。2,000円+追加料金700円。いつも陣取る最前列真ん中が車椅子席になってる配置だったのでそのすぐ後ろの3列目中央にした。

 私がリドリー・スコット好きなのは何割かは押井守の影響(笑)だけど、押井はなんつっても『ブレードランナー』『エイリアン』でSF映画の以前・以後を画するやつを2回もやった! てとこをリスペクトしてるんだろうけど、私はどっちかというと最近(でもない)の史劇が好き。というか『ロビン・フッド』を撮ったのがきっかけと言うてよい。つーてもラッセル・クロウがヒゲ面のまま演じてる時点でロビン・フッドの俗なイメージとは全く違うわけで、この「何を撮っても同じ絵面」感が逆によい。そういう意味で今回トゥーロン要塞の攻城戦なんかは『キングダム・オブ・ヘブン』的だし、ナポレオンのセックスがヘタクソという描写とか「情欲だけの関係では子供はできない」とか言うてるところは『最後の決闘裁判』的でもあり、集大成という感じだった。

 キューブリックが『ナポレオン』を撮る計画があったけどポシャった、というのを、実に惜しい!! とずっと思ってたので、リドリー・スコットがナポレオン、と聞いた時にまず連想したのはそれだったんですよ。パンフ読んだらサー・リドリーもそれは意識してたらしく、しかも『バリー・リンドン』大好きとか書いてあった。キューブリックが、実現しなかったナポレオンの代わりに撮ったのが『バリー・リンドン』という側面があると聞いて私も観たのだがこれは全く面白くなかったので、そこは解釈違いである。閑話休題。

 で、今回の『ナポレオン』はジョゼフィーヌとの関係を軸に描くという話だったので、期待してるのはそれじゃねえんだよなあ、と思ってたのだが、実際に観たらヴァネッサ・カービーのジョゼフィーヌがメチャメチャいいオンナだったので一発で気に入ってしまった。ナポレオンとの関係も、奔放なジョゼフィーヌが一方的にナポレオンを振り回していたというようなありきたりな解釈ではなく一筋縄ではいかない演出になっている。

 その分、ナポレオニックとしては駆け足というか主要なイベントだけ拾って描いていく構成になっていて、モスクワが燃えてロシア遠征から撤退したら次のシーンはもう退位宣言書に署名してエルバ島行きだったりする。とはいえ、ブリュメール18日の時に議会で突き上げられて大ピンチだったのを弟リュシアンの機転で(兄に剣を突きつけて啖呵を切って)どうにかなったとか、戴冠式では(教皇によってではなく)自分で戴冠した、とか、エルバ島からパリに戻る途上で迎撃に来た部隊を煽動して味方につけるところとか、描くエピソードはさすがにツボを押さえている。158分もあるけど長いとは全く感じなかった。

 ただ全体の流れもジョゼフィーヌに関連づけられていて、エルバ島を脱出するきっかけが皇帝アレクサンドル1世がジョゼフィーヌに会ったという記事を読んだことだったり、パリに戻って会いに行ってみたら既に死んじゃってたのを初めて知って、それでショボくれたせいでワーテルローで負けたみたいな流れになってるのはさすがにどうかと思った。息子のナポレオン2世もやっと産まれたと思ったらそれっきりだし、タレーランはさすがに他のキャラよりは出番あったけど、ナポレオンとの関係をもう少し描いてほしかった、などなど思わなくもないが、158分あってこれなんだから、まあ、無理か。

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