StarDust Tears

リクオ『リアル』発売記念スペシャル・ツアー

於、荻窪 Top Beat Club

 初めて行ったけど2023年に開業したばかりの新しい箱で、1階がカフェ、2階がレコード屋、そして地下がホールになってる。サイズは大きくないけど当然ながら設備が新しく内装もカッチリしてて綺麗だし明らかに音響もいい。こういうところにさっそく出演してるのはさすがにライブ暮らしの長い人だなって感じする。ドリンクメニューもやたら充実してて、ふだんはライブハウスで飲み物なんかどうでもいいのでミネラルウォーター(大抵はただのペットボトルの水)を注文するのだが、メニューに圧倒されてなんとなく「ジンジャーエール(辛口)」にしてみたらちゃんとジンジャーシロップとソーダをカクテルして作っていた。そんなところもリクオ好みなのかもしれない。

 さて、この際だから改めて書くと、最初にリクオのライブを観たのは、記録がないので正確にはわからないが、確かまだ横手久美子だった頃の氷青を観に吉祥寺の曼荼羅かどこかに行った時だったと思う(追記 → 2004年の下北沢の箱だった、と別のライブレポに書いてあった)。つまり対バンだった。それだけなら何とも思わずそれきりだった可能性はあるが、ちょうど当時購読していたキーボードマガジンにコラム連載してる人じゃん、と気づいて少し気になった。それでCDも聴いてみて好きになり、たまにライブに行くようになった、という流れだったはず。当時はライブは一人で弾き語るスタイルが多く、ニューオーリンズスタイルのピアノをバリバリ弾きまくり、ピアニストばかりのユニット Crazy Fingers でピアノ3台並べて弾き倒すなどの活動もやっていてとにかくピアノをガンガン弾く人というイメージで、それが好きだった。

 そういえば当時まだブレイクする遙か以前の、完全に無名だった頃の星野源の曲『穴を掘る』をよくカバーしていた。私は私でたまたま星野源をクドカン脚本のドラマ『タイガー&ドラゴン』にチョイ役で出てた人と認識してたので、なんで星野源? と当時から思ってたのだが両者にどんな繋がりがあったのか今に至るも不明である。閑話休題。

 リクオのライブで特徴的なのは、少なくともワンマンの場合は座って飲食できるような、いわゆるライブバー的な店でやることが多かったことだろうか。今日の Top Beat Club はいわゆる普通のライブハウスだし、eプラスでチケット予約した時の席種は「オールスタンディング」となっていたと思うが、行ってみたら椅子が並べてあってシッティングだった(後ろの方は立ち見)。ライブハウスに椅子ならまだいいんだけど、下北沢のラ・カーニャとか、高円寺JIROKICHIとか、店名は忘れたけど渋谷のバーとか、普通にテーブル席で食事もできるような店だと何が困るってオッサン一人で行きづらいってことで、10年くらい前の時点で既に女性客が多くなってきて(?)いて厳しいなあと感じていた記憶がある。だからというわけではないが記録では2018年代々木ザーザズーを最後に観に行ってなかった。

 20年間も追ってるといろいろ変わるわけで、今回久しぶりに行って感じたのは、ファンコミュニティがすごく成熟したなってことだった。こっちは相変わらず単独行動なのだが、周りはいたるところでお久しぶり~とか声かけ合ってて、女性客が多いとかそんなレベルではなく、見た感じ一人で来てるような客はごく少数だったように思う。今回は表題通りアルバムのレコ発ツアーなので買って聴いて予習はしてあったが、収録曲『酔いどれ賛歌』なんかはもう完全にお馴染みの、という感じでコール&レスポンスでノリまくっていて圧倒された。自分はそれこそチケット販売サービスで扱うような大きめのイベントしかチェックしていないが、今も全国を回って年間100本を超えるライブをやってるので、追う人は行きまくってるのかな。
 しかし昔からファン同士の交流みたいなことに縁がなくて、一体どうやって知り合って仲良くなってるのかわからない。そもそも自分も氷青とキーボードマガジンという二つのきっかけが重ならなければライブに行くようにならなかったわけで、そんな風に一人で入門してくるのが普通ありえないのであって、最初から誰かに誘われて一緒に来るのがスタンダードだから自然と繋がってるということなのかな。いや、現場で自然に友達になるみたいなことも普通にあるのかもしれないが私には無理というだけかも。昔、地下アイドルの追っかけしてた時期は少しだけそんなこともあった。閑話休題。

 もう一つはリクオの活動自体の変遷で、ここ10年ほどは HOBO HOUSE BAND でのバンド編成のライブが中心になっている。私が最初に好きだったソロピアノのスタイルとはずいぶん違うとも言える。 HOBO HOUSE BAND はいいバンドだしそれは得がたいものなので続いてるのは素晴らしいと思うけどね。特にペダルスティールというレアな楽器は好きなのでこれはこれで観たい。いや先に書いた通りふだん無数にやってるライブは一人で回ってるのも多いんだと思うので、一人でピアノ弾くスタイルも見たい私はそっちもチェックすべきなのか、と今これを書いていて気づいた。

 また今年の下半期は還暦ツアーというのもやるのだそうで既にスケジュールとゲストの面子が出ている。9月の高円寺は Dr.Kyon、伊東ミキオという上記 Crazy Fingers の中心メンバーでもあった同志的なピアニストが(あと大御所チャールズ清水も)出演する日もあるので、これは観に行きたい。

 今日のライブ自体についてあまり書いてない気がするが、それも毎度のこと、ということで。

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