StarDust Tears

『窓ぎわのトットちゃん』 / 『君たちはどう生きるか』

早稲田松竹

 このプログラムはさすがに土日は混むだろうと思って、しかもモーニングショーの後の昼から二本立てなので、平日に休みをとって午前中から優雅に鰻を食い、昼一の回で観たのだが、いつもの最前列中央の席が取られてたので一つ横にズレた。なぜだ! 朝一で並んでもめったにそんなことないのに。
 ていうか勘違いしていて、朝一以外の席を発売するのは「前の回の上映が始まった後」だと思ってたんだけどモーニングショーは例外で二本立ても朝一から売ってたらしい。それでもまさか、昼の回を観るのに朝から席を確保しに来る奴がおるとは思わんやん。甘くみてた。ていうかそれなら平日休むより土曜朝一で並んで席を確保してから昼間で時間潰すほうが確実だったわ。
 真ん中の2席が取られてたから二人連れだろうと思ったら夫婦で、トットちゃんが始まって間もなくジジイのほうがイビキかいて寝だしたのでイラッとした。すぐ奥さんが叩き起こしてたけど。

 そんなわけですが、実はあまり書くことがない。

 『窓ぎわのトットちゃん』は、直前に原作を読み直したのだが、その段階でちょっと引いてしまった。全て実話なのだが、あまりにも理想の学校、理想の教育者として描かれていて。しかも幼児だったトットちゃんにはそのことはわからなかったが、書いている今の視点でその素晴らしさがわかる、という構造で、あざとい! 黒柳徹子という人を知らなかったなら著者はとんでもねえ偽善者だと思ったことだろう。こんなにも理想の児童教育というものを信じられるなら、そりゃユニセフ親善大使にもなるよねと思った。
 ふつうの学校ではみだし者として弾き出された主人公が自由な校風の学校で居場所を見つける、という話は『蓬莱学園の初恋!』もそうだしラノベの学園ものにおける定型でもあり自分も好きだったはずなのだが、改めて学校をユートピア的に描くことの功罪みたいなことも考えてしまい、もはや素直に楽しめなくなっているのかもと悲しくなった。もっとも、本作では最後に空襲でトモエ学園が全焼し廃止されるところまで書いており、ユートピアの不可能性まで描き切っている。そこまで含めて実話であるにもかかわらず作品として完璧な構成。時代を越えるような大ベストセラーとはそうしたものか。
 あ、関係ないけど世界に4人しかいない(当時)というユニセフ親善大使の一人がノルウェーの女優リヴ・ウルマンと書かれてたのが少し気になった。このブログにも書いた映画『遠すぎた橋』に出演してる女優で、それ以外のことを何も知らないのだが、有名な人だったのかな。でも日本における黒柳徹子クラスだとすると必ずしも国際的な知名度が高いわけでもないのか。閑話休題。
 戦後の小林先生を知る人は無口な人だったという印象を語っており自分の知る印象と違うということを黒柳徹子は新版あとがきに書いているが、この人の別側面を書いた評伝などあれば読んでみたいものだと思った。
 以上原作のことしか書いてないのだが、それでもスペクタクルとして、新しい校舎として使われる廃列車が運ばれてくるところなんかは画で見るのを楽しみにしてたんだけど、なんも印象に残らんかった。残念ながら自分には刺さらない映画だった。

 『君たちはどう生きるか』は、ソレが原作という時点でドン引きしたんだけど、ほぼタイトルを借用してるだけと知って一安心したものの、作中で主人公が愛読しておりしかも亡き母親からメッセージ付きで薦められた本という扱いでもう一度ドン引きした。
 先行者の感想は「宮崎駿成分の純度・濃度が高すぎる」みたいなのが多かったので、もっとドロドロした感じをイメージしてたのだが、そうでもなく(?)、宮崎駿の良さが出ているというか「悪さが出ていない」、プレーンな宮崎駿映画で、自分的には評価しやすい、とても良い映画だと思いました。かなり好き。

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