StarDust Tears

『シン・仮面ライダー』

https://www.shin-kamen-rider.jp/

新宿バルト9

 先行して観た人たちから『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』とは違うから気をつけろというような話がチラホラ聞こえていたので、じゃあ『キューティーハニー』だな! と思って観に行った。というのは冗談だが(そもそもキューティーハニーを観た記憶ない)

 私はエヴァンゲリオンの直撃世代の中ではむしろずいぶん庵野秀明に思い入れのないほうだと自分では思っているのだが、『シン・~』はなんだかんだ劇場に観に行ってるな。前にも書いたけど大画面とか音響とかに本質的に興味がないので家で配信で観ればいいじゃんてなってなかなか劇場まで行かないのだが、やはり話題になってると早く観ておかなくちゃという心理が働くということか。しかもドルビーアトモスのシアターをなんとなく選んで追加料金200円取られていた。音響に興味ないっつーのに。

 以下ネタバレ。

 プロモーションでは緑川ルリ子をフィーチャーしてる印象があって、前の記事に書いたけど浜辺美波好きなのでそこは期待してた。ルリ子ってオリジナルでは本郷が一旦いなくなった時点で一緒にフェードアウトしちゃうんだけど、改造人間であり人外の異形となってしまった本郷猛が正体を隠さなきゃいけないってところと、父親の緑川博士を殺した犯人と誤解されるというダブルパンチが初期の展開として効いてると思ってたのでそこを拾うのはいいな、と思ったのだが、人工子宮で産まれてショッカーの中で育った生体計算機、という庵野ヒロインナイズされたやつになってた。まあ浜辺美波はよかった。
 池松壮亮という役者はあんまりよく知らなかったんだけどこいつが本郷? と思ってたら頭脳明晰スポーツ万能はそのまま「なれどコミュ障で無職」ということになってて、それか、と。緑川博士は娘のお守りとして本郷を改造した、的なことをイチローが言うてたけど確かにそういう面はあって、つまりそれってキカイダーだよな、と考えると納得できる。それを言うなら蝶モチーフなのはイナズマンだけどイチローというのはキカイダー01の名前であって、仮面ライダー第0号とか言い出すのもちょっと変に思えるがキカイダー01と捉えれば腑に落ちるわけです。SHOCKERのボスが人工知能で、人類の幸福を実現せよという命令を追求してたらああなったとかは、まあどうでもいい。脚本協力にクレジットされてる山田胡瓜のアイディアが入ってるらしいけど。でも全人類をハビタット世界に、というのは人類補完計画と変わってないなと思ってしまった。

 今回は中に入ってる人を意識したということでライダーが喋る時に顎が動くのに拘ったり、マスクとスーツの間の首のところの生身が見えてたり、後ろ髪がマスクから出てたり、スーツアクター使うところも減らしてかなりキャストがアクションもやったみたいですね。あのスーツの上にコート着てるのもイイ。ビジュアル面はかなり好み。あのコートが商品化されたら買いたいと思ったが、改めてよく見ると別にコートのデザイン自体がすごくかっこいいわけでもなかった(笑。 もちろんマスクのデザインもいい。一文字が登場するとちゃんと1号と2号になってるのもいいよね。当たり前だけど。一文字といえば最初の変身の時に「お見せしよう」もやってたし、本郷のライダーキックは蹴ったまま地面に叩きつけて突き刺すって感じなのに対して一文字がKKオーグを吹っ飛ばした感じはいわゆる「力の2号」みがあってそこもよかった。KKオーグは初の三種合成だとか言うてたけどちょっとゲルショッカーっぽいよね。死ぬと身体が溶解しちゃうのもゲルショッカーだし。
 これも個人的なことだけど柄本佑も嫌いじゃないというか、デビューした頃は柄本ジュニア特に顔がいいわけでもないし二人もいて区別つかないとか言われてたと思うんだけど、だんだん佑のほうが二枚目寄りみたいな高島兄弟的な棲み分けになってきてイケメンか否か論争が起きたりして、いい役者になってきたと思う。

 アクションはジャンプしたら宙返りのカットが挿入されたり戦い始めるといきなり開けた場所に移動してたりはオリジナルのノリを踏襲してて、BGMもオリジナルの流用はやるだろうと思ってたのでそこも期待通り。『レッツゴー!! ライダーキック』のイントロをリミックスしたみたいなやつも個人的に好き。
 要するにシン・ウルトラマンに較べてもオリジナルからのアレンジの仕方が私の好みに合ったんだと思う。ショッカーライダー12人もライブアクションで撮ったんだけど画が使えなくてCGメインに差し替えたらしいけど、本郷と一文字がやり合うシーンとかCG部分はシン・ウルトラマンにも通じるものがあるというか、これが庵野の実写アクション演出の最終形なのか、庵野のやりたいイメージにまだCG技術が追いついてないのか、どう理解したものか微妙。個人的にはアニメに較べたらまだまだだと感じるのだが。

 あと最後に本郷がアレしちゃうらしいってのもチラッと聞いてたんで期待してたんですよ。石ノ森章太郎のマンガでは本郷は死んでしまって、その前に戦ってた一文字が頭に負傷したショックで脳改造の洗脳が解けて2号ライダーになるんだけど、皆さんご存じの通りあれは藤岡弘が撮影中に負傷したという純粋なアクシデントから要請された展開であって石ノ森先生も導入するのに苦労したと思う。本郷は研究所で脳だけ生かされてて、「心を継いでくれ」とか言われた一文字は通信で本郷と感覚を共有した状態になるんだけど、一文字のプライバシーないじゃん!! と読んだ当時は衝撃を受けた。しかもいつの間にか本郷の音沙汰なくなったと思ったら100%機械で作られた身体に脳を戻してダブルライダーという。どう考えてもショッカーの技術力を超えてるじゃん!!
 というのをやってくれるのかと思ったら、マスクに本郷のプラーナが宿っているのでマスクかぶってる時は一緒みたいなことだった。ラストシーンは石ノ森版そのまま。いい落としどころだと思う。でもルリ子のプラーナは別の場所に移したとかわざわざ言うてるし、本郷とルリ子との関係は恋愛じゃなく信頼だという一方で、本郷コミュ障問題は一文字とバディになる形で成長を見せているようでもあって、庵野相変わらずだなとも思った。

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