StarDust Tears

『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』

新宿バルト9

 タイトル末尾のリピート記号はさすがに表記できないと思ったら「:||」と書かれてる例もあるようだ。公式では確認できなかったのでとりあえず採用してない。 → ちゃんとUnicodeに文字としてあったので適用。あるような気はしたけどAtokで見つからなかったからいいかなって……。

 もうガルパンが来週公開だからその前には観とくか、くらいのテンションで行った。
 以下ネタバレ配慮なし。大したことは書きませんけど。

 つーか、そんなにネタバレ忌避するような内容じゃなかったですよね。というのが個人的な感想。どこを伏せておきたかったんだろう。一番最後のあれ? もっと全てをひっくり返すようなとんでもない何かがあるのかと思ってた。まあ、『:Q』のあの終わり方から次の一本できれいに完結するわけないやろとも思ってたので、どうやら概ねみんな納得するような終わりになってるらしいというのが逆に大いに意外ではあったけど。

 今回、公開初日が月曜だったにもかかわらず日中から観に行ってる人が周りにもかなりいて、みんなまだそんなにもエヴァに魂を引かれていたのか、と正直ビックリした。ある人が「自分はエヴァよりウテナ派だったから」と言うてたが、私も完全にそっちだなあ、「アトム派と鉄人派」的なノリでいうと。でも、ウテナ派といっても私にとって重要だったのは幾原邦彦監督より脚本の榎戸洋司だったことがだんだん分かってきて、そっちを追うと一番好きなのは『トップをねらえ2!』であり、トップ2の監督は鶴巻和哉だしそもそも榎戸洋司はTV版のエヴァにも参加している。結局エヴァからは逃れられない。
 もう少し続けると、鶴巻監督はずっと新劇エヴァにフルコミットしていたので、トップ2的な作品の系譜は榎戸洋司と組んだ五十嵐卓哉監督(ウテナの演出にも参加)の『スタードライバー』、『キャプテン・アース』と続いていたのだが、その後このコンビは『文豪ストレイドッグス』が当たったためずっとそれが続いており、私の好きだった流れは途絶えてしまった。ファンとして『キャプテン・アース』をヒットさせられなかった責任は我々(誰?)にもあるかもしれないが。

 エヴァに話を戻すと、新劇場版は庵野総監督が自分で作っているといつまでたっても話が終わらないので、作品を畳ませる役割を負っているのが鶴巻和哉監督であろうというのが私の勝手な想像で、少なくともマリ=坂本真綾は明らかに鶴巻和哉がトップ2的な世界から連れてきたキャラであり、彼女が本作の最後で果たす役割は象徴的だ。まあそのトップ2も元は庵野のトップをねらえ!をきっちりと踏まえた続編なわけで、鶴巻監督の立ち位置はあくまでそこなのだろう。アスカの目から棒が出てくるところなんかはフリクリ。パンフの前田真宏インタビューによると「鶴巻和哉の出した完結編のアイディアはとてもロジカルで納得のいくものだったが、自分はそれより庵野監督のわけのわからない叫びのようなものを実現したかった」とか言うてて、非常によくわかると思った(笑。

 今回の映画の中身については、エヴァが終わるなら本来こうだろうという内容をストレートにやっていて、意外性がないのが逆に驚きというか、これができるんならTVシリーズの次がこれでよかったではないか、と思ってしまった。作中で十数年経っているのはその間リアルの世界で年月が過ぎてしまったことを反映しているわけで、そこは必ずしも本質ではないよね、と思ったけど主人公だけ歳をとってないというのはトップをねらえ! でもやってたことでそれを鶴巻和哉は裏テーマとして解釈していたな。

 「話を終わらせに来た鶴巻和哉」という話でいうと、私の中で新劇のクライマックスは『:Q』でヴンダー発進シークエンスのBGMがΝノーチラス号の曲だった瞬間なのだが、あの時も「これか! 庵野作品を終わらせるのは巨大戦艦か!」と思った。今回のシンでも艦同士の砲撃戦なんかもやってるのだが、ナディアほど盛り上がった感じがしないのはオーバーテクノロジーすぎてもはや「艦」のカテゴリーを完全に超えちゃってるからかなあ。でもナディアの神前裁判みたいなシーンもあったし、艦長が味方のクルーに撃たれる修羅場もあったし、最終決戦前に総員退艦するシーンはグッとくる演出になっていて、やはりナディアが、というよりその元ネタであるヤマト的なものが庵野の原点なんだろうな。

 他は強いていえば相田ケンスケは旧作中でも典型的なオタクだったのに、そのケンスケすら事実上ヴィレの連絡員として、それなりに有能でないと務まらないであろうポジションを任されていて、みんながみんなそんな立派な大人になっているのを見せられるのもそれはそれでしんどいなあ、と感じてしまった。もっと何でもない普通の人になった旧作キャラがいてもいいのに。まああの世界ではそういう人は大抵死んじゃったんだろうし、そもそもシンジのクラスメートはエヴァのパイロット候補生として適性で集められていたんであって最初から普通の人ではないんだっけ。
 それに庵野監督からすれば学生時代の友達がみんな一流のプロになって一緒に仕事してるわけだからそういう世界なのかもしれないなあ。いや、彼らの周りにもダメな奴らはいただろうけど。

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