「からかい上手の高木さん」の山本崇一朗、週マガで連載「それでも歩は寄せてくる」 - コミックナタリー
明記されてないけど作者がプライベートで(?)Twitterに上げてたマンガが原型ですね。暇なので漫画描きました pic.twitter.com/xkhMARczXs
— 山本崇一朗.高木さん⑩ツバキ② (@udon0531) 2018年4月22日
暇なので漫画描きました pic.twitter.com/xkhMARczXs
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その後、続きが不定期にポストされてましたがハッシュタグもなくスレッドにもモーメントにもなっておらず単に「将棋のやつ」とだけ呼ばれており、私も最近は追い切れてない……と思って確認したら昨年11月のその19が最新か。
2話目の時点で「続き描いてリプがいっぱいあったので」とのコメントなので最初から続きものとして構想してたわけじゃないんですね。まあいずれ何かの媒体に連載される形になってもおかしくないとは思ってたけど(見逃しやすいことを除けば今までのTwitterのままでも何の不満もないけど)、まさかマガジンが獲りに来るとは。
『徒然チルドレン』も作者が個人Webでやってたのを拡大出張みたいな形でマガジンの連載になって驚いたけど、マガジンてそういう雑誌だっけ……? ていう体質の部分がもう長い間ちゃんと読んでないのでよくわからない。大暮維人の化物語とか始まったんだよね。『はじめの一歩』どうなったかな? ってたまにめくってみるくらいだからなあ。こないだ宮田が出てたっぽいけど読み逃した。一歩は一歩で、どう引っぱるのかと思ってたら引退しても普通に続いてるし、まあ『あぶさん』も引退したあと普通に続けてたしな、と思って読んでたら復帰への布石っぽい描写も出てくる。いや、このまま幕を引くのも有りだと思うんですよ。昔読んでて意識したことはなかったけどマガジンの思想として「血統や生まれで特別な能力を持つ主人公」を嫌う、というのがあるらしくて(たぶんにジャンプへのアンチテーゼだろうけど)、つまり凡人の努力を描くということですよね。『ベイビーステップ』は高校からテニスを始めた主人公が学習能力の高さと目の良さと徹底的に考えるテニスでどんどん巧くなっていく、その課程そのものに面白さがあって、最後は個人でコーチとデータ分析担当スタッフを雇ってツアープロとしてやって行けるようになった、くらいのところで(大会の途中で)連載終了している。結末に批判はあったけど、この主人公の着地点としてはこれでもいいじゃない、と私は思ったわけです。
はじめの一歩も、いじめられっ子だった一歩が「強いってどういうことか知りたい」と言ってボクシングを始める。父親が腕っ節の強い漁師だったとはいえ、そのボクサーとしての身体能力は幼少期から釣り船屋の仕事で鍛えた足腰の強さとバランス感覚がベースになっているわけです。そして日本チャンピオンになり、世界前哨戦で2敗目を喫したあたりで、鷹村から「お前はもう十分に強い、強さを知りたいだけならここまででいいだろう」てなことを言われる。鷹村はこの作品世界で最強と位置づけられるボクサーであり、人間の動物としての野性の部分の強さプラス、科学的なボクシング理論に基づく技術を練習で徹底的に身体に覚え込ませた、というボクサーの完成形として描かれている。その鷹村が、一歩がさらに上(つまり世界のトップ)を目指す理由はない、そこへ行くのは特別な何か(おそらくモチベーションや精神面を意図している)を持った人種だけだ、と宣告する。一歩にはそれはないだろうと。
それ以前に、一歩とその最大のライバル宮田の試合が、それぞれ日本と東洋太平洋のタイトルを持った状態で実現しそうになるんだけど、宮田は苦渋の選択で父親との因縁がある相手との対戦を優先し、一歩との試合は流れてしまう。お互いに背負うものが大きい立場になっているので、このタイミングを逃せばもう対戦できる機会の巡り合わせは二度とないだろう、ってことになってしまった。少年マンガ、ボクシングマンガとしてのセオリーでいえば、ここで宮田との決着をつけ、伊達から託された世界タイトル挑戦に進んで最強王者リカルド・マルチネスに勝って完結、という流れが一つの王道ではあったはず。そちらを選ばなかったのはアンチクライマックスであり、この展開も含めて引きのばしであるという批判は大きく、マンガとしてのはじめの一歩の評価はダダ下がりしている。ただ私がちゃんと読んでたのは真田、ハンマー・ナオ、島袋とかそのへんまでで、その後は後輩が出てきたり何だりで一歩はなかなか試合しないようになり、それもある意味リアルかもしれないが(笑、いわゆる引きのばしであることは否めないだろう。
でも、一歩が『ベイビーステップ』的なマガジンイズムで、日本チャンピオンにはなったけどそれより上に行く器ではなかったということで、宮田との決着も実現せずにパンチドランカーになって引退して、ボクサーの第二の人生を描いて幕を下ろすならそれもよかろうじゃないか、と思ってたんですよ。ところが、かつての鷹村と自分の関係を反復するように不良少年にボクシングの手ほどきをしてた一歩は、その少年がケンカにボクシングを使ったのを知ってブチギレてしまい(平手で)彼を殴る。そのキレた一歩を見たジムの後輩板垣は、一歩の中に「怪物」を垣間見る、みたいな演出になってるんだけど、この「怪物」性こそが、鷹村の言う世界を狙う資格として持ってなきゃいけない何かではないかと解釈できるフシもあって、えー、ここからまだそっちに話を引っぱるの……? と思ってしまったのも事実である。
あ、「将棋のやつ」に関していうと、将棋部の部員が先輩と後輩の二人しかいない、というシチュエーションなだけで、内容は将棋にはほとんど触れてないラブコメがメインで、将棋マンガといえるかどうかギリギリなレベル。まあ今回の連載ではどうリメイクしてくるかわからないというか、公式には両者の関係は不明なのだが。
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