StarDust Tears

『劇場版シティーハンター 新宿PRIVATE EYES』

https://cityhunter-movie.com/
新宿バルト9。

 直近のアニメ、といっても1999年のTVスペシャル3作目とかですけど、そのへんはハッキリ言ってヒドい出来だったので、今度のはどうなの? と懐疑的だったんですが、監督がTVシリーズ3までのシリーズディレクターだったこだま兼嗣で、他のメインスタッフは『アイカツ!』とかバリバリやってる世代らしいので、期待していいのかな? と思ってしまい観た。
 以下ネタバレあり。

 オープニングから『Angel Night ~天使のいる場所~』が流れるアクションシーンで、歌舞伎町を爆走するカーチェイスからコマ劇のゴジラヘッドが壊されそうになるなど「今の新宿」でシティーハンターをやる、という絵面になっていて期待させる。他にも歴代の主題歌が挿入歌として使われていて、それはまあいいんだけど、飲み屋のシーンで『PARTY DOWN』、ザコ敵を蹴散らすシーンでは『FOOTSTEPS』などTVシリーズの挿入歌もそのままの使われ方をしている他、BGMも全部TVシリーズからの曲なのは嬉しい。そしてエンディングの『GET WILD』への引きはもはやセルフパロディじゃないかってくらいの完璧な「シティーハンターのEDへの引き」になっていた(笑。

 映画としては正直いって微妙。伝言板がARになってたりとか、ちょっとしたアイディアの部分はいいんだけど……。よくも悪くもいつものシティーハンターで、依頼人の女の子をマンションに泊めてシャワーを覗こうとしたり夜這いをかけようとしてトラップに引っ掛かったり香のハンマーで殴られたり最後は簀巻きにされて窓の外に吊されるというくだりを死ぬほどこってりやる。みんなの期待してたシティーハンターはこれなんだなあ……と思った。依頼人の父親が技術者で、開発した新技術が軍事利用されるのを知って封印しようとして事故死しちゃうんだけれども、そのロックの鍵が娘の瞳の虹彩認証という、シティーハンター的にはベタベタなプロットだった。あと黒幕が山寺宏一なんだけど、山寺宏一といえばTVシリーズでは毎週のように獠に蹴散らされるグラサン黒服のチンピラ役をやってたのでその山ちゃんがラスボスというのも一つのお遊びと言えなくもない(笑。 で、その山ちゃんこと御国が実は香の幼馴染で、香を食事に誘ったりしてアプローチして獠との関係が微妙になったりするという趣向らしいんだけど、今回の時系列がどのへんなのかよくわからんので二人の関係がどうなのかピンとこない(笑。 北条司先生いわく原作の最終エピソードよりは手前の感じとのことだけど、その状態のまま現在まできちゃったのかよ! て感じだし、といってまともにTVシリーズの30年後というわけでもないから微妙なんですけど、とにかく香の幼馴染だった男の子が米国の大学でwarfare理論というのを発表して死の商人になり故郷の新宿を戦場にする、って一体何がどうして突然悪人になって帰ってきたのか全く不明だし、戦争(war)ではなく戦闘状況(warfare)を作ることで武器を売るって押井守かよ! って感じで、現代的な悪役のつもりなのかもしれないけどよく描けてるとはとても思えない。クライマックスも獠と海坊主らは新宿御苑で無人兵器を相手に戦う一方で香が敵の本拠地のビルに屋上から侵入して速攻で捕まり、結局は獠が救出のため突入するという展開で、何をやってるんだかよくわからん。
 個人的には戦う相手が無人兵器(機械)だけってのがまず不満で、長編には良いライバルキャラを出してほしいんですよね。その意味では『愛と宿命のマグナム』が私のベストなんですけど、今回はドローンを遠隔操作してるのがラスボスの御国なのである意味で黒幕と直接戦ってる演出になってるのが工夫なのかもしれないけど、海坊主には店(喫茶CAT'S EYE)を銃撃で破壊した傭兵隊長と一騎討ちする見せ場があったので、獠にもそういうのがほしかったです。黒幕の黒幕みたいな本職の武器商人ヴィンス・イングラードというのも出てくるけど何もしないうちに死んじゃうし。CV芳忠さんなのに(笑。

 話はそんな感じだけど、キャラクターは冴子、海坊主に美樹といったいつもの連中には十分出番があるし、「教授」とその助手になった名取かずえまで出たのには驚いた。そんなの覚えてる人いるか?w 原作ではたまーに出てくるけど、アニメでは一回しか出てないのでは。DVDボックス持ってる私ですら記憶が定かでない。そういや教授がハッキングする部屋が「80年代SFアニメの秘密基地」みたいなビジュアルでそこだけ異常に古くさくて驚愕した。何だったんだあれは。それとキャッツアイの三姉妹とは実は初のコラボだけど、トレーラーではすごい活躍してそうな雰囲気出してたけど(笑、ちょうどいい匙加減だったと思う。ヘタすると『シティーハンターVSキャッツアイ』くらいの内容なんじゃないかと心配してたがそんなことはなかったぜ。
 ただ海坊主がギャグというかコメディやりすぎてるのは気になったし、女の子を「~ちゃん」づけで呼ぶのにはメチャメチャ違和感があった。氷室真希のことすら「真希」としか呼んでなかったしなあ。もしかすると『エンジェル・ハート』の海坊主が反映されて丸くなってたりするんだろうか。そっちはほとんど読んでないからわからん。
 そういえば香がモデルとしてウェディングドレスを着るシーンがあるんだけど、香のウェディングドレスといったら『エンジェル・ハート』の物語開始時点で既に死んでる(!)香の死因が「獠との結婚式で着るウェディングドレスを試着しに行った帰りに(轢かれそうになった子供を助けて)交通事故死」というのを意識してるとしか考えられないですよね? これは何回も書いたことあるけど香が死んで別のヒロインが獠の相棒になってるエンジェル・ハートは開始直後に批判が殺到して、単行本1巻が出た時点で北条司先生は「これはシティーハンターの続編ではなくパラレルワールドです」と宣言した。シティーハンターオタだった私はその時点でじゃあ読まなくていいやとなって現在に至るわけです。その後いくつか設定変更して本当にパラレルワールドになったらしく、たとえば海坊主のパートナーの美樹はエンジェルハート世界では子供になってるらしい(笑。 閑話休題。
 つまり「ウェディングドレス以後の香」というのはエンジェルハート世界とは別の分岐になって香が死なない世界であるという宣言とも受け取れるんだけど、どう考えても穿ちすぎでしょう。前述の通り獠と香の仲もまだ全然煮え切らない感じだし。EDバックで「TVシリーズ名場面リメイク集」みたいな画が流れるんだけどそこでも獠と香の偽装結婚式のシーンをフィーチャーしてたし、単に監督がウェディングドレス大好きだっただけの可能性が高い(笑。

 予定ではついでに原作シティーハンターの話も書こうと思ってて最近読み直したりしてたんだけど、また今度にします。

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