StarDust Tears

『台風クラブ 4Kレストア版』『お引越し 4Kリマスター版』

早稲田松竹。

 相米慎二監督二本立て。この映画の評価はどうなのかよくわからんかったのだが、開場時刻ジャストに行ったら結構並んでた。最近油断が多いな。

 『台風クラブ』は、Prime Video で配信が始まった時に観て、確かそれより以前にも昔一度観ている。シナリオ収録した特集本(2023年の4Kレストア時に出た)も(Amazonにないのを確認して)物販で買うてしまった。この映画がなんでそこまで自分に刺さっているのかよくわからんのだが、改めて観ると思ったより異様な映画だ。
 この映画がカルト的な伝説の名作みたいになっているのは、今では全くありえない、JCを景気よく脱がせてえろいことやらせているというお宝映像的な側面もあるのだろうか。メインキャラほぼ全員が中学生なのに喫煙しているし、冒頭から夜の学校のプールで泳いでいた野球部の山田が溺れて意識を失ったという場面だが、その原因はJC軍団に海パンを脱がされ(ここまでならご褒美かもしれないがw)さらにコースロープを首に巻かれて絞首刑のようにプールサイドから吊り下げられるという、絵面は完全に凄惨なイジメである。いろんな意味で度を超えている。恐ろしい時代である。
 といってもシナリオでは穏当なのを演出でやりすぎているところも多く、上記のプールのシーンも脚本ではコースロープを足に引っかけたという描写。野球部男子三人組の一人、清水健は、ヒロインの一人美智子が好きなのだがその感情表現がうまくできずに時々とんでもない行動に出る、というエネルギーを持て余した中学生男子としてギリギリあるかな、というバランスで脚本は成立していると思うのだが、演出では完全に病んだ少年になっていて、下校して自宅のドアを出たり入ったりしながら一人で「ただいま」「おかえりなさい」と繰り返すシーンはシナリオにはない。理科の実験で焼けた金属を美智子の襟首に投げ込んで背中を火傷させるという小学生並の暴走行為は脚本通りだが、台風で閉じ込められた校内で美智子を追いかけ回し職員室に立て籠もったのを扉を蹴破って侵入しようとする(ここまでは脚本通り)際に扉を何度も蹴りながら「ただいま、おかえりなさい、ただいま……」と呟いているのは完全にホラー映画。職員室で遂に捕まえた美智子の制服を引きちぎるシーンも(背中の傷跡を確認したい意図なのは通じるが)ヤバすぎる。全体的に暴力表現がシナリオよりエスカレートしている印象があり、家出して東京に行った理恵(工藤夕貴)を自宅に連れ込んだ自称大学生の小林(尾美としのり)が、彼女がやっぱり帰ると言い出すといきなり平手打ちするんだけど、シナリオでは「頬に手を当てる」とあるのがこうなったのか? でもその直前で「髪を撫でる」からの流れで、それはビンタじゃないんじゃないかな!? 暴力がカジュアルだ。尾美としのりもどう演じてよいのかわかってないように見える。
 工藤夕貴は文句なくかわいいのだが、家出のきっかけはよくわからん。よくわからん理由で家出するのがJCだろと言われればそうだが、なんでそのタイミング? 母親との確執、彼氏の三上くんが東京進学する、そして台風、という感じでシナリオでは多少フォローしているが。あと布団に潜り込んで服を脱ぎ捨ててもぞもぞやってるシーンが自慰じゃないかと言われてるんだけど、普通に見ればそう見える演出なんだけど、この映画における中学生は始終わけのわからないムーブをしているので逆にその解釈が正しいのかどうかわからん。ここはシナリオにはない。ただ、絵面はともかく、微妙な関係が示唆されている母が朝起こしてくれず起きたらいなかった、という流れで母親の布団に入り込んで「お母さん、お母さん……」と言ってるので、違うんじゃない? とも思う。
 そして最大のポイントであろうストリップは、シナリオでは教室でやってるだけなのを、体育館のステージで下着になり、さらに台風の中を校庭に出て全部脱いで歌い踊り狂うという伝説のシーンに。プライムビデオでは脱いでるのかどうかもよくわからなかったのだが、4Kレストア版を劇場のスクリーンで観るとちゃんと見える。映像はかなりクリアになってます。もちろん見えてはいけない部分まで見えるわけではないが。
 渕崎ゆり子はメガネかけててこの時点で渕崎ゆり子のキャラが完全に仕上がっている。ちょっとフシギな感じも含めて。大西結花ってスケバン刑事の風間三姉妹の一人だったのか。今まで興味がなかった。あと佐藤浩市が友情出演となっており、セリフがなかった健の父親かな? 40年前の1985年で何歳だ? と思ったら違った。体育館で「台風来るぞ、早く帰れ」って生徒たちに言いながら走り回ってる役だという。こりゃわからんわ。当時まだ二十代。わざわざ「友情出演」て付くのはそれなりに格の高い役者なのかと思ってたけどどうなんだろ。それから鶴見辰吾も出ていてどこにいた? と思ったら三上の兄の大学生だった! 当時19歳。ちなみにシナリオには全ての登場人物の年齢が明記されており、健の父親だと思ったのは寺田農(!)で64歳なので祖父なのかな。そして佐藤允の名前もあって好きな役者なので気になったのだが用務員(54)かと思ったら三浦友和の婚約者の叔父(48)だった。本人は当時51歳? だからちょうど真ん中くらいか。
 余談だけど最近たまたま『ブレックファスト・クラブ』を観直したんだけど、青春映画としてちょっと近いかなと思った。1985年でほぼ同年。音楽に合わせて踊るシーンもある。

 『お引越し』は何も知らずに観たが、やたら芝居の達者な子役が主人公だなあと思ったら田畑智子だった! 93年。そうかこの頃子役だったのか。上でも書いたけど昔の映画って、長く活動してて今もいる役者がこの時は何歳くらい? って感覚がバグるよね。中井貴一もだいぶ若いよなと思ったら三十すぎくらいか。小学生の親だもんな。そしてその嫁は誰だっけと思ったら桜田淳子だった。これが最後の映画出演だとか。笑福亭鶴瓶も若いが、鶴瓶は何やっても鶴瓶にしか見えないので普通の映画に出しても違和感しかないと思うのだが。ここでは学校の先生。エンドクレジット見ると笑福亭一門の芸人が大量に並んでいたのでバーター的なやつなんだろうか。あ、田畑智子は私の中では『新撰組!』の近藤の嫁ね。閑話休題。
 冒頭、父親だけ引っ越して夫婦が別居するのだが、引っ越しはそれだけなのにタイトル『お引越し』は変じゃない? 原作がそうなんだけど。読んでみるか。映画が面白ければ原作は読みたくなるし、映画が意味不明でも原作を確認したくなるので、わりと原作を読んでしまうほうである。前にも書いたっけ。子供(レンコ)は両親によりを戻してもらいたくていろいろするという話なんだけど、こういう話で子供って必ず関西弁じゃない? と思った。なんでだろう。まあ京都が舞台なので全員関西弁なんですけど。
 「近所で火事が頻発している」というラジオニュースがあからさまに伏線ぽく流れたり、レンコが理科室で(また理科の実験!)アルコールランプをひっくり返して小火を出す、大文字焼き、琵琶湖祭りの花火、篝火など、この映画では台風に対して「火」が日常との断絶の象徴。最後は祭りの夜に神域(?)の林を通り抜けたレンコが琵琶湖に浮かぶ宝船を見るという幻想的なシーン。これは京都・滋賀じゃないと成り立たないわ。ここんとこ滋賀関連作品をやたら鑑賞してる気がする……。

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